クリニックの立地条件と大切な4点項目

医療

クリニックの立地条件

クリニック開業場所の立地条件

移転は難しく慎重に調査を
-重視すべき4ポイント-

経営

- 2015.09.25 -

クリニックの立地条件は重要

通常、クリニックは地元密着型医療の特色を持ちます。
そのため、医療圏は概ね半径1キロ内に制限されることが多いでしょう。
(半径500m圏内を一次診療圏、1,000m範囲内を二次診療圏と捉えます)
なお、車社会が発展した郊外なら、3キロ内とも言われます。
もし開業後に問題が発覚し、移転しようとしても困難です。
1次データ、2次データを活用し、開業前の実地調査は入念に行いましょう。
(※1次:独自調査情報、2次:公共機関等の公開済み情報)

立地条件、4つの重点チェック項目

①提供サービスと患者の関係

1点目は、提供するサービスと顧客特性との相性です。
例えば、美容整形外科と小児科で考えてみます。

美容整形外科の場合、患者は遠方から来院するという特徴があります。
そのため、駅前ビル等の立地が好まれる傾向にあるようです。
この場合、二次診療圏から来る来院患者も多く、エリアの情報収集が広範囲に及びます。

他方、小児科の場合、子供を電車に連れることは少なく、住宅街に近い車での来院が好まれます。
一般的には、一次診療圏で来院患者の80%を占めると言われます。

つまり、患者の利便性やニーズを抑える必要があるということです。
また、その他以下の項目もチェックしておきましょう。

  • A)営業時間帯と人の往来数
  • 例:ビジネス街と住宅街では人の特性や往来時間帯が変わります
  • B)地域の年齢層、人口分布
  • 例:高齢者が多い、子連れ核家族が多い、富裕層が多い、出生/死亡数、転入人口/転出人口、受療率、等の地域特性

②近隣テナントの環境

2点目は、クリニックに隣接する店舗との相性です。
例えば、駅前のテナントに入居する場合で考えてみます。

駅前という特性上、テナントの入れ替わりも多く発生するでしょう。
また入居する事業者の業種も様々です。
問題となるケースは以下のような場合です。

  • A)女性向けクリニックの側に風俗店やキャバクラ
  • B)飲食店からのにおい流入(例:焼肉店の煙)
  • C)落ち着いた雰囲気が売りのクリニック側に騒がしい店舗

近隣の外部環境によっては、患者が近寄りがたいクリニックとなってしまいます。
そこで、医療系専門テナントビルや密集地域での開業も考えられます。
しかし、他院と被る領域(※)については、患者争奪戦や関係悪化が発生するかもしれません。
(※インフルエンザ予防接種等)

なお、テナントの場合は広告規制も確認しておきたい項目です。
デザイナーズマンション等では、広告看板出稿禁止の場所もあるからです。
配管の関係からトイレの増設にも制限がかかる場合もあります。

また、将来オペ室の設置等を考えられている場合は、相応のスペースも必要でしょう。
部屋を跨ぐ改修・増設は難しいため、拡張性という観点も視野に入れておきます(ただし、最も重要なのは集客であることをお忘れなく)。

③医師会内部の人間関係

一般には知られていませんが、一部地域には残る先輩後輩関係等のしがらみです。
昔風に言えば、「丁稚奉公した者は親方の商圏から離れて開業せよ」といった具合です。
勿論、開業場所は本来自由ですが、人間関係により束縛されることがあるようです。
チェックする項目は以下のようなものです。

  • A)大学の先輩後輩の関係
  • B)地元医師会の有力者の有無
  • C)病診連携の可能性

最近では、これらの事情は、クリニックのホームページ等で簡単に調査・確認できます。
また、医療機器メーカー等の取引先から入手することも可能でしょう。

④地域特性やキーパーソン

クリニックでは口コミによる集客効果が無視できません。
住民たちの近所づきあいの盛ん度合いや、自治会長や商店街の振興組合長など地域のキーパーソンが誰なのかも知っておきたいポイントです。

地域に立っている建物にも注目すべきでしょう。
賃貸住宅が多い地域では住民の流動性が高く、在宅医療の実施には向かないかもしれません。
一方、介護保険施設や高齢者向け住宅があれば、連携対象ともなります。

都市開発が予定されている地域では、近い将来大規模開発により人の流れが変わる可能性が少なくありません。
倉敷市の例でいえば、イオン倉敷沿いの西阿知大通りは3~5年前に比べて地価が1.5~2.0倍近く上昇していると言われます。
開業地がリスク要因にならないように、医師が直接現地を歩いてみることをお勧めします。

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