テナントと自社物件の違い【クリニック開業】

医療

テナントと自社物件

クリニック、借りるか?建てるか?

税務上どちらが有利か
-開業時の選択-

経営

- 2015.09.28 -

税務上は借りた方が有利

テナント物件(土地や建物)を借りた場合、地代家賃を払い全額その期の経費とできます。
一方、土地を購入し自社クリニックを建設した場合、全額その期の経費とはできません。
一例として、鉄骨造の診療用建物の場合、39年かけて費用化していきます。
また、経費化できるものは建物のみで、土地代は経費となりません。
よって、テナントの方が税務上は有利といえるでしょう。

なぜ土地代は経費にならないか

建物等の固定資産を取得した場合、税務上は減価償却という手続きで、取得費を費用化していきます。
これは、建物の効果が将来の数年に渡り発現(=収益獲得に貢献)されると考えるからです。
そして、建物は通常20~40年で朽ちるため、その期間に渡り費用が配分されます。

単純化して説明すると、以下の通りです。

  • A)建物建築代金:5,000万円
  • B)耐用年数:39年
下↓
  • 1年で費用化できる金額=128万円(※)
  • ※5,000÷39=128万円

一方、土地というものは、通常朽ちることがありません。
(厳密には天災や土壌汚染等により使えなくなることもあるでしょうが)

そのため、土地代は経費にできないことになっています。
なお、土地に関わる固定資産税は経費にすることができます。

相続を考えた場合はどうか

他方、相続まで考えた場合は、自社物件(土地等)を購入する方が有利です。
なぜなら、小規模宅地の特例適用により、土地の相続税額を安く抑えることができるからです。
現金で資産を保有するより、土地に換価する方が一般的に相続税は低くなります。

ただし、注意点は、「現行法制度では」という前提条件があることに尽きます。
若くして開業しようとする方は、ご自身の相続まで考えていない場合も多いでしょう。
また、未来の法改正は誰にも予測できません。
開業時はテナントで、事業承継時期に自社物件を、という考え方もできます。

サブリースという選択肢

土地購入は経費にはなりませんが、サブリースという方式を使えば、実質的に経費とすることができます。
具体的には、土地所有者にクリニックを新築してもらい、土地・建物を纏めて借り上げる方式です。
この場合は、毎月の支払額=家賃経費になります。
土地を取得するための資金を一括で用意する必要がないため、資金繰りの面でも有利です。
ただし、以下のようなデメリットもありますので、注意が必要です。

  • ・内装工事や建築費用の一部負担を求められる場合がある
  • ・通常契約期間が長期にあり、中途解約に違約金が発生する
  • ・サブリースを扱えるハウスメーカーは限られる

立地選定の失敗リスクを考えるか

綿密な診療圏調査をしても、安定的な来院が見込めない場合もあります。
どうマーケティングしても業績が伸びない場合は、クリニック立地場所の変更も頭に浮かぶでしょう。
このリスクを考えるのであれば、自社物件保有よりテナントの方が有利です。
特に、見ず知らずの土地で開業するのであれば、尚更リスクヘッジが必要かもしれません。

将来の拡張性はあるか

クリニック経営が軌道に乗ってくると、規模の拡大を考えるかもしれません。
医師を雇用した分院なら問題ありませんが、そうでない場合、構造上の一体性が求められます。
このとき、テナント物件では内階段の設置等、自由な改修・拡張が難しいでしょう。
(不動産オーナーの意向が介在するため)

それに比べれば、自社物件は拡張性に優れるといえそうです。
なお、テナントであっても、より大型物件へのクリニック移転で対応することも可能です。
(他方、自社物件を容易に売却することは難しいでしょう)
しかし、移転により既存患者が離れる可能性もあり、軌道に乗っているほど、慎重にならざるを得ません。

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